辻田 真佐憲(つじた まさのり、1984年8月22日 - )は、日本著述家評論家近現代史研究者[1][2]京都大学大学院客員准教授[3]。政治と文化・芸術の関係を主題に、著述、調査、評論、レビュー、インタビューなど幅広く活動している[2][3]

著書に『「あの戦争」は何だったのか』『「戦前」の正体』『ルポ 国威発揚』『防衛省の研究』『超空気支配社会』『大本営発表』などがある。

経歴

大阪府出身[1][2]清教学園中学校・高等学校を経て[4]慶應義塾大学文学部卒業[2]慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程中退[1][5]

中学時代から世界各国の軍歌蒐集に熱中し、2005年に軍歌趣味サイト「西洋軍歌蒐集館」を開設。2011年、『世界軍歌全集 歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代』(社会評論社)を刊行し、43か国・60政権・300曲の愛国歌国民歌戦時歌謡・闘争歌・革命歌労働歌・郷土歌・宣伝歌などの翻訳と解説を編纂した[6][7]

2012年から文筆活動に専念し[8]、音楽史・メディア史・教育史などを題材とする著作や評論を発表。評論活動のほか、インタビュアーやコメンテーターとしても活動している。2016年に出演した『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)の「大本営発表特集回」は、第54回ギャラクシー賞ラジオ部門選奨を受賞した[9][10]。2020年11月からは配信プラットフォーム「シラス」(株式会社ゲンロン)にて「辻田真佐憲の国威発揚ウォッチ」を配信している[11]

研究・主張

  • 著書およびウェブ上で、「軍歌趣味」という概念を提唱。軍歌という音楽ジャンルは、それを肯定するにせよ、否定するにせよ、ある特定の政治的立場から扱われることがほとんどであったが、辻田は軍歌をそのような政治性とは距離を置いて、オタク的・サブカルチャー的な「趣味」の対象として軍歌を「消費」することを推奨している。実際、軍歌は国民的な大衆娯楽でもあったとし、動画投稿サイトが一般に普及し昔の軍歌音源へのアクセスが飛躍的に簡単になっている現代の環境において軍歌を「趣味」として「消費」することは、戦争肯定・イデオロギー擁護といった軍歌の本来的機能を解体することを意味する、とも述べている[12][13]
  • 学校法人森友学園が運営する塚本幼稚園の愛国教育については、「戦前回帰」ではなく、「戦前っぽいもの」をカット・アンド・ペーストし、「愛国的な世界観」を作り上げた「二次創作」の典型例だとし、「戦前ならば、不敬罪に問われたかもしれない」と述べている[14]

著書

単著

  • 『世界軍歌全集:歌詞で読むナショナリズムとイデオロギーの時代』社会評論社、2011年12月
    • 韓国語版『세계군가전집: 군가의 가사로 읽는 민족주의와 이데올로기의 시대』이미지프레임(Image Frame)、2015年7月
  • 『日本の軍歌:国民的音楽の歴史』幻冬舎新書、2014年9月
  • 『愛国とレコード:幻の大名古屋軍歌とアサヒ蓄音器商会』えにし書房、2014年11月
  • 『ふしぎな君が代』幻冬舎新書、2015年8月
  • 『たのしいプロパガンダイースト・プレス、2015年12月
  • 大本営発表:改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』幻冬舎新書、2016年7月
  • 文部省の研究:「理想の日本人像」を求めた百五十年』文春新書、2017年4月
  • 『空気の検閲:大日本帝国の表現規制』光文社新書、2018年3月
  • 『天皇のお言葉:明治・大正・昭和・平成』幻冬舎新書、2019年3月
  • 古関裕而の昭和史:国民を背負った作曲家』文春新書、2020年3月
  • 『超空気支配社会』文春新書、2021年6月
  • 防衛省の研究:歴代幹部でたどる戦後日本の国防史』朝日新書、2021年12月
  • 『「戦前」の正体:愛国と神話の日本近現代史』講談社現代新書、2023年5月
  • 『ルポ 国威発揚:「再プロパガンダ化」する世界を歩く』中央公論新社、2024年12月
  • 『「あの戦争」は何だったのか』講談社現代新書、2025年7月

共著

監修(書籍)

  • 『日本の軍歌』辻田真佐憲, 保利透:監修、晋遊舎、2014年6月
  • 『日本の軍歌 傑作選』辻田真佐憲, 保利透:監修、晋遊舎、2015年7月
  • 満洲帝国ビジュアル大全』洋泉社、2017年3月
  • 『文藝春秋が見た戦争と日本人 : 文藝春秋100周年』保阪正康, 辻田真佐憲:編、文藝春秋、2022年7月

監修(音楽CD)

  • 『大名古屋軍歌』、大久良俊ほか、ぐらもくらぶ、2012年12月8日発売 ASIN B00A3QONMM
  • 『續・大名古屋軍歌』、V.A., ぐらもくらぶ、2014年10月19日発売 ASIN B00NVIQYRQ
  • 『幻の大名古屋軍歌CDセット』、V.A., ぐらもくらぶ、2014年10月19日発売 ASIN B00NVIQZFW
  • 『あなたは狙われている 〜防諜とは〜 スパイ歌謡全集』ぐらもくらぶ、2014年10月
  • 『日本の軍歌アーカイブス Vol.1 陸の歌「戦友」』ビクターエンタテインメント、2015年3月
  • 『日本の軍歌アーカイブス Vol.2 海の歌「海ゆかば」』ビクターエンタテインメント、2015年3月
  • 『日本の軍歌アーカイブス Vol.3 空の歌「同期の桜」』ビクターエンタテインメント、2015年3月
  • 『日本の軍歌アーカイブス Vol.4 銃後の歌 戦時下の少女歌謡』ビクターエンタテインメント、2015年3月
  • 『日本の軍歌アーカイブス Vol.5 クラシック篇 戦時下の芸術音楽』ビクターエンタテインメント、2015年3月
  • 『出征兵士を送る歌:これが軍歌だ!』キングレコード、2015年5月
  • 『みんな輪になれ:軍国音頭の世界』ぐらもくらぶ、2015年5月
  • 『日本の軍歌・軍国歌謡全集vol.1』ぐらもくらぶ、2015年11月
  • 『あじあに乗りて:歌と満洲』ぐらもくらぶ、2017年7月
  • 『兵隊さんの汽車:幻の戦時童謡』ぐらもくらぶ、2017年7月

寄稿、対談など

  • 『別冊歴史REAL 満洲帝国 満鉄・満映・関東軍の謎と真実』(担当範囲「知られざる日本人音楽家と満洲とのかかわり」)洋泉社ムック、2014年10月
  • 『第一次世界大戦とその影響』(『軍事史学』第50巻第3・4合併号)(担当範囲「日本陸軍の思想戦 清水盛明の活動を中心に」)錦正社、2015年3月
  • 『徹底検証 教育勅語と日本社会』(担当範囲「教育勅語から考える教育勅語肯定論の戦後史:敗戦直後の擁護論から森友学園事件まで」)高橋陽一, 井戸まさえ, 斎藤貴男, 原武史, 辻田真佐憲ほか:執筆、青木理, 寺脇研, 木村草太:鼎談、岩波書店、2017年11月
  • 現代用語の基礎知識 臨時増刊ニュース解体新書』(担当範囲「森友学園問題」「道徳の教科化」「政治と文化の接近」「君が代と国歌」)自由国民社、2017年10月
  • 『現代用語の基礎知識2018年版』(担当範囲「森友学園の愛国教育」)自由国民社、2018年1月
  • 『〈平成〉の正体 なぜこの社会は機能不全に陥ったのか』(対談「特別対談 辻田真佐憲×藤井達夫 保守とリベラルは新しい『物語』をつくれるか?」藤井達夫:著、イースト新書、2018年8月
  • 『現代用語の基礎知識2019』(担当範囲「歴史認識のウソ」「加計学園の獣医学部新設問題」「文部科学省の連続不祥事」)自由国民社、2019年1月
  • 『グローバル関係学5「みえない関係性」をみせる』(担当範囲「戦時下日本の音楽産業と軍歌レコードの受容」)福田宏ほか:編集、岩波書店、2020年11月
  • 『文藝春秋オピニオン:2020年の論点100』(担当範囲「検閲と自主規制 2020年以降の『政治と芸術』」)文藝春秋、2020年1月
  • 『現代用語の基礎知識2021』(担当範囲「コロナ禍と同調圧力」)自由国民社、2021年1月
  • 『近代日本宗教史 第5巻 敗戦から高度成長へ』(担当範囲「コラム① 国旗・国歌」)春秋社、2021年3月
  • 『現代用語の基礎知識2022』(担当範囲「コロナと五輪に揺れたこの国の『空気』」)自由国民社、2022年1月
  • 『文藝春秋オピニオン 2022年の論点』(担当範囲「キャンセルカルチャーの行き着く先」)文藝春秋、2022年1月
  • 『絶版本』(担当範囲「それでも手放さなかった一冊」)柏書房、2022年9月
  • 『訂正する力』(インタビュー)東浩紀:著、朝日新書、2023年10月
  • 『第三帝国の愛人 ヒトラーと対峙したアメリカ大使一家』(解説)エリック・ラーソン:著、中公文庫、2024年9月
  • 『西尾幹二全集 第22巻A』(著者が初対面の近現代史研究者・辻田真佐憲氏と対談する / 辻田真佐憲 述)西尾幹二:著、国書刊行会、2024年10月

ほか

連載など

出演

ウェブ

  • 『辻田真佐憲の国威発揚ウォッチ』シラス/YouTube、2020年11月 - [18]
  • ポリタスTV』「辻田×津田月イチ時事放談」(毎月末)YouTube、2021年1月 -

ラジオ

テレビ

  • ザ・ドキュメント』「うたと戦争 〜70年目の私たちへ〜』関西テレビ、2014年9月[20]
  • 『終わらざる戦後 日の丸・君が代のいま』テレビ大阪、2015年8月
  • 『ザ・ドキュメント』「軍神 ~忘れられた兵士たち〜』関西テレビ、2015年8月
  • 『世界大惨事大全』「スペースシャトル コロンビア号 空中分解事故」NHK、2022年3月29日
  • 『軍人スポークスマンの戦争 〜大本営発表の真実〜』NHK、2022年12月17日[21]
  • 『エラー 失敗の法則』「真相 ハドソン川の奇跡」NHK-BS、2023年3月30日[22]
  • 『エラー 失敗の法則』「崩れた安全神話 スリーマイル島原子力発電所事故」NHK-BS、2023年6月16日[23]
  • ワイド!スクランブルテレビ朝日、2025年8月15日

監修など(その他)

ほか

脚注

出典

  1. 1 2 3 国威発揚の回顧と展望 辻田真佐憲”. webゲンロン. 2025年9月14日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 辻田真佐憲”. 朝日新聞. 2025年9月14日閲覧。
  3. 1 2 辻田真佐憲 公式サイト”. sites.google.com. 2020年10月9日閲覧。
  4. 辻田 真佐憲”. www.facebook.com. 2020年11月8日閲覧。
  5. 辻田真佐憲”. ヤフーニュース・オーサー. 2025年9月14日閲覧。
  6. 辻田、『世界軍歌全集』、社会評論社、2011年、著者略歴。
  7. 『世界軍歌全集』補完ページ(仮)”. 西洋軍歌蒐集館. 2013年2月14日閲覧。
  8. 【著者に訊け】辻田真佐憲氏 豊富な資料で「検閲」を検証”. 週刊ポスト (2018年4月27日). 2025年9月14日閲覧。
  9. 日本メディア史の再暗部を描く『大本営発表』にあらたなニュース!”. 幻冬舎 (2017年5月17日). 2025年9月14日閲覧。
  10. 第54回ギャラクシー賞入賞作品一覧”. 放送批評懇談会. 2025年9月14日閲覧。
  11. 辻田真佐憲の国威発揚ウォッチ”. シラス. 2025年9月14日閲覧。
  12. 辻田、前掲書、2-3頁、422-423頁。
  13. 当サイトについて”. 西洋軍歌蒐集館. 2013年2月14日閲覧。
  14. 「軍歌を歌う幼稚園」森友学園の愛国教育は、戦前だったら不敬罪!?(辻田 真佐憲) @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2020年10月9日閲覧。
  15. くまにち論壇”. 熊本日日新聞. 2025年9月14日閲覧。
  16. 「戦争」は8月15日ですっきりとは終わっていない 真の戦後を考える文庫群”. 読売新聞 (2025年8月29日). 2025年9月14日閲覧。
  17. 辻田真佐憲”. Yahoo! JAPANニュース. 2025年9月14日閲覧。
  18. 辻田真佐憲”. webゲンロン. 2025年9月14日閲覧。
  19. もし自分が総理だったら、石破茂が考える防衛計画とは…!?<TOKYO FMサンデースペシャル>『石破茂に防衛について聞いてみたwith 辻田真佐憲』”. 株式会社エフエム東京 (2023年2月9日). 2025年9月14日閲覧。
  20. 2014年9月27日(土)深夜1:35~2:30 うたと戦争~70年目の私たちへ~”. 関西テレビ. 2025年9月14日閲覧。
  21. 軍人スポークスマンの戦争 〜大本営発表の真実〜”. NHK (2022年12月17日). 2025年9月14日閲覧。
  22. エラー 失敗の法則 真相 ハドソン川の奇跡”. NHK (2023年3月30日). 2025年9月14日閲覧。
  23. エラー 失敗の法則 崩れた安全神話 スリーマイル島原子力発電所事故”. NHK (2023年6月16日). 2025年9月14日閲覧。

関連項目

外部リンク