職業上の安全及び健康に関する条約(しょくぎょうじょうのあんぜんおよびけんこうにかんするじょうやく、The Occupational Safety and Health Convention)は、1981年6月22日[1]国際労働機関で採択された条約ILO155号条約(ILO155ごうじょうやく)ともいう。中核的労働基準にあたる条約のうちの1本である。

内容

批准

日本は、2026年4月1日に職業上の安全及び健康に関する条約を批准し、その12ヶ月後に効力が生ずる予定である。G7諸国ではイタリアに次いで2番目の批准となり、全体では92番目の批准国となった[2][3]

内容

この条約は、労働安全衛生に関して規定する条約であり、批准国は、最も代表的な労使団体と協議して、安全・衛生・作業環境に関する国の政策を策定しなければならないとする。生命や健康に切迫した重大な危険のある場合、労働者はその状況を直ちに直接の監督者に報告し、使用者が是正の措置をとるまで、労働者は危険な状態にある職場に戻ることを求められない[4]

この条約は、国が行うべき施策(第二部、第三部)と、企業が行うべき措置(第四部)に分けられて規定されている[5]

第3条 この条約の適用上、
(a)「経済活動部門」とは、労働者の雇用されているすべての部門(公務を含む。)をいう。
(b)「労働者」とは、雇用されているすべての者(公的被用者を含む。)をいう。
(c)「作業場」とは、労働者が就業のため、いる必要があり又は行く必要がある場所であつて使用者の直接的又は間接的な管理の下にあるすべてのものをいう。
(d)「法令」とは、権限のある機関により法的効力を与えられるすべての規定をいう。
(e)「健康」とは、就業に関連し、疾病にかかつておらず又は病弱でないことをいうのみならず、健康に影響を及ぼす身体的又は精神的な要素であつて就業中の安全及び衛生に直接関連するものを含む。
第4条 各加盟国は、国内の事情及び慣行に照らして、かつ、最も代表的な使用者団体及び労働者団体との協議の上、職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する一貫した国の政策を策定し、実施し及び定期的に検討する。
2 1の政策は、作業環境におけるその存在が不可避な危険の原因を、合理的かつ実行可能である限り最小にすることにより、就業に起因し若しくは関連し又は就業中に生ずる事故及び健康障害を防止することを目的とする。影響を及ぼす身体的又は精神的な要素であつて就業中の安全及び衛生に直接関連するものを含む。
第11条 権限のある機関は、第四条の政策を実施するため、次の事項が漸進的に実施されることを確保する。
(a)企業に係る計画、建設及び構造物の配置に関する条件、操業の開始に関する条件、企業に影響を及ぼす主要な変更及び企業目的の変更に関する条件並びに作業に使用される技術的設備の安全に関する条件の決定(危険の性質及び程度により必要とされる場合に限る。)並びに権限のある機関により定められる手続の適用
(b)禁止され、制限され又は権限のある機関による許可若しくは管理の対象とされる作業工程並びに物質及び因子の決定(この場合において、数種の物質又は因子に同時にさらされることに起因する健康障害を考慮する。)
(c)使用者及び、適当な場合には、保険機関その他の直接関係のある機関による職業上の事故及び疾病の届出の手続の制定及び適用並びに職業上の事故及び疾病に関する年次統計の作成
(d)就業中に又は就業に関連して生ずる職業上の事故、疾病又はその他の健康障害の事例が重大な事態を反映すると思われる場合における調査の実施
(e)第四条の政策に従いとられる措置並びに就業中に又は就業に関連して生ずる職業上の事故、疾病及びその他の健康障害に関する情報の毎年の刊行
(f)国内の事情及び可能性を考慮した上での、労働者の健康に対する危険に関し化学的、物理的及び生物学的な因子の試験を行う制度の導入又は拡大
第12条 職業上の使用に供される機械、設備又は物質を設計し、製造し、輸入し、提供し又は輸送する者が次のことを行うことを確保するため、国内の法令及び慣行に従つて措置をとる。
(a)合理的かつ実行可能である限り、機械、設備又は物質がこれらを適正に使用する者の安全及び健康に危険を引き起こさないことを確保すること。
(b)機械及び設備の適正な取付け及び使用並びに物質の適正な使用に関する情報、機械及び設備の危険並びに化学物質並びに物理的及び生物学的な因子又は生産物の危険な特性に関する情報並びに既知の危険を回避する方法に関する指示を利用し得るようにすること。
(c)研究及び調査を行うこと又は(a)及び(b)の規定を実施するための必要な科学的及び技術的な知識に遅れないようにすること。
第13条 自己の生命又は健康に急迫した重大な危険をもたらすと信ずる合理的な理由のある作業状態から退避した労働者は、国内の事情及び慣行に従い、不当な結果から保護される。
第16条 使用者は、作業場、機械、装置及び工程であつて当該使用者の管理の下にあるものが、合理的かつ実行可能である限り、安全でありかつ健康に対する危険がないものであることを確保することを要求される。
2 使用者は、保護のための適当な措置がとられる場合には、化学的、物理的及び生物学的な物質及び因子であつて当該使用者の管理の下にあるものが、合理的かつ実行可能である限り、健康に対する危険のないものであることを確保することを要求される。
3 使用者は、必要な場合には、事故の危険又は健康に対する有害な影響を、合理的かつ実行可能である限り防ぐための適切な保護衣及び保護具を提供することを要求される。
第17条 二以上の企業が同一の作業場において同時に活動に従事する場合には、これらの企業は、この条約の要件を適用するに当たつて協力する。
第19条 企業の段階において、次の事項に係る措置がとられる。
(a)使用者が課されている義務を履行するに当たり、労働者が就業中に協力すること。
(b)企業における労働者代表が職業上の安全及び衛生の分野で使用者と協力すること。
c)企業における労働者代表が職業上の安全及び健康を確保するため使用者によりとられる措置に関する十分な情報を提供されること並びに企業における労働者代表が企業の秘密を漏らさないことを条件として代表的な労働者団体と当該情報について協議することができること。
(d)労働者及び企業における労働者代表が職業上の安全及び衛生について適当な訓練を受けること。
(e)労働者又は企業における労働者代表及び、場合に応じ、企業における代表的な労働者団体が、国内の法令及び慣行に従つて、労働者の作業に関連する職業上の安全及び健康のすべての面について調査することができること並びに使用者から協議を受けること。この目的のため、技術顧問を相互の合意により企業の外部から招くことができる。
(f)労働者が、自己の生命又は健康に対し急迫した重大な危険をもたらすと信ずる合理的な理由のある状態を直ちに直接の監督者に報告すること。この場合において、使用者は、必要がある場合に是正措置をとるまでは、生命又は健康に対し急迫した重大な危険が引き続き存在している作業状態に戻ることを労働者に要求することができない。
第21条 職業上の安全及び衛生に係る措置は、労働者に費用を負担させてはならない。

脚注

  1. 職業上の安全及び健康並びに作業環境に関する条約(第百五十五号)”. 外務省 (2026年4月25日). 2026年4月25日閲覧。
  2. 日本が労働安全衛生に関するILO条約第155号を批准(ILO:2026年4月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)”. www.jil.go.jp. 2026年4月25日閲覧。
  3. 日本、職業上の安全および健康に関する条約を批准 | International Labour Organization”. www.ilo.org (2026年4月1日). 2026年4月25日閲覧。
  4. 1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号) | International Labour Organization”. www.ilo.org (2014年3月21日). 2026年4月25日閲覧。
  5. 1981年の職業上の安全及び健康に関する条約(第155号) | International Labour Organization”. www.ilo.org (1981年6月22日). 2026年4月25日閲覧。

関連項目