本栖湖の空中写真(1975年撮影)。国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)(現・地図・空中写真閲覧サービス)の空中写真を基に作成

本栖湖(もとすこ)は、山梨県南都留郡富士河口湖町南巨摩郡身延町にまたがる富士山の北西山麓にあり、富士五湖の一つで、その最西端に位置する[4]。最大水深121.6mは、富士五湖の中で最も深い[3]

千円紙幣E号券、五千円紙幣D号券の裏面に描かれる逆さ富士の図案に用いられている。

富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の「富士山域」の一部として世界文化遺産の構成要素に含まれている[4]

1959年に発行された自然公園の日制定記念切手

地理

富士山から望む雲海に浮かぶ天子山地、左から毛無山雨ヶ岳竜ヶ岳、本栖湖。遠景は赤石山脈

東岸は富士河口湖町、西岸は身延町に属するが、湖面は境界未定である[1]。面積は4.70km2で、富士五湖では山中湖河口湖に続き3番目の大きさである[3]富士箱根伊豆国立公園の特別地域内にある[5]

湖面の標高は901m[3]。水面海抜高度は同じ富士五湖の西湖や精進湖と同じとされ[注 1]、これらの湖は透水性の高い溶岩で隔てられられているだけで、上流から西湖、精進湖、本栖湖の順に事実上つながっていると考えられている[7]

富士五湖の形成について、1980年代には古富士火山の活動末期に宇津湖や剗の海(せのうみ)などの富士四湖が形成され、新富士火山の活動の変遷に伴って、約千年前に形成されたと考えられた[8]。新富士誕生時の富士五湖周辺は宇津湖と剗の海(せのうみ)、そこから流れる大田川が存在したとされ[7]、その後も宇津湖と剗の海(せのうみ)の存在を前提に、800年(延暦19年)の噴火で剗の海(せのうみ)の一[9]部が分断されて本栖湖が形成されたと紹介されることがある。

一方で、2000年代以降の研究では最初に宇津湖という大きな湖が形成されていたという見方は否定的に考えられるようになっている[10]。本栖湖では約2万年以前に「古本栖湖」ができた後、約8千年から1万年前に現本栖湖に続く湖が成立したと推定されるとの見方がある[8]

以上のように地理的条件や歴史から、火山灰などの湖底堆積物から富士山の噴火史を推測する研究・分析の対象となっている[11]

流入河川はない(富士五湖は本栖湖以外はいずれも流入河川がある)[7]。また、自然流出河川はないが人工放流として富士川への放流路がある[7]

本栖湖と西湖の間で、溶岩流の上に形成された森林が今日の青木が原樹海である。なお、この三湖及び流入河川は海に面していない内陸県各県では唯一の二級水系となっている。

湖岸のうち、富士河口湖町側は「本栖」地区、身延町側は「中ノ倉」および「釜額」地区に属するが、身延町側には人家はほとんどない。2024年10月1日時点の本栖地区の人口は123人[12]

透明度

湖水の透明度は、『理科年表』平成24年 85冊では 11.2m が採用されている。季節変動があり、最小値はプランクトンの増加する7月、最大値は9月[13][14]、従って調査を行った時期と組織により異なった値が示されている。しかし、好条件であれば、20mを超える透明度を観測することもあり、本州では実質的に最高透明度の湖である[13]が、栄養塩類の増加に伴い透明度が低下しているとされている。

近年では水の透明度が低下していたが、2001年から毎年6月の第一土曜日に本栖湖クリーンアップを開催[15][16]2006年3月から[要出典]水上オートバイモーターボート等の動力船の使用を禁止するなど水質が綺麗になってきている[17]

観光

2013年(平成25年)6月22日、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産(富士山域)の一つとして、世界文化遺産に登録された[4]。日本の世界文化遺産としては13箇所目。

ウィンドサーフィンが盛んで、夏季には多くのウィンドサーファーが訪れる。風光明媚なため湖畔周辺にはホテルや企業の研修所が並ぶほか、レジャーの場として活用されている。観光船による遊覧や、ブラウントラウトニジマスなどを狙うフィッシングも盛ん。ヒメマスの釣り場としても知られる。静岡大学教育学部附属静岡中学校の生徒・教員が毎年7月に、湖畔でキャンプを行う。

また、周辺には富士急行の子会社である株式会社ピカによって運営される「富士本栖湖リゾート」があり、英国式庭園ピーターラビットイングリッシュガーデンや富士芝桜まつり等[18]が楽しめる。

魚類と外来魚問題

本栖湖における在来魚は明らかとなっていないが山中湖と同じとされフナウグイナマズアブラハヤの4種と推測されている[19]。前述のヒメマスニジマスブラウントラウトのほかコイ、オイカワウナギワカサギなどが棲息している[20]

ヒメマスは1917年(大正6年)に十和田湖から移植されたのが最初であり、同じ富士五湖の西湖と並んでヒメマスの湖沼として知られるようになった[19]。また、近縁種のクニマスも1935年(昭和10年)に移植されたが[21]、ヒメマスと広範囲に交雑してしまい純粋なクニマスは確認されていない[注 2][22]

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)の特定外来生物であるコクチバスが密放流さたのが1996年に確認され、在来生態系への影響が懸念されていたが、1997年から地元漁協や山梨県による駆除活動の結果 2004年以降 2012年まで確認情報が無いことからコクチバスに関しては根絶されたと考えられる[23][24]オオクチバスに関しては1980年に密放流されたものが確認されている[19]

本栖湖ならではの釣り魚種として人気が高いヒメマスは釣果が近年不振で、遊漁料を払ってヒメマスを狙う釣り客は2017年の約1700人から、2023年は436人と四分の一近くに減った。水産庁が1960年代に中禅寺湖(栃木県)に導入した北米原産の大型魚食魚レイクトラウトが2022年11月に本栖湖で釣り上げられたことから、密放流されてヒメマスを食害していると推測され、その後に山梨県水産技術センターが行なった網漁で多数のレイクトラウトが捕獲され、胃の内容物からヒメマスが確認された[25]。レイクトラウトは日本全体でも産業管理外来種に指定されている[26]山梨県庁は2022年12月、レイクトラウトの県内河川・湖沼での拡散を防ぐため、放流や生きたままでの持ち出しを禁止。本栖湖漁協は、ヒメマスでも捕食されにくい成魚に育ててからの放流に切り替えたが不漁は続き、2024年秋は釣り解禁を見送った。山梨県庁は、レイクトラウトに発信器を取り付けて産卵水域の特定を図るなど、駆除に向けて取り組んでいる[25]

その他の湖面利用

1966年から2001年まで、全国モーターボート競走会連合会(現:日本モーターボート競走会)が運営する本栖研修所や競艇の育成センターがあり、湖面を使って練習が行われていた(2001年以降は福岡県柳川市に「やまと競艇学校(現:ボートレーサー養成所)」として移転)。競艇界では「本栖」という言葉が、やまと移転前の競艇研修所のことを指す隠語として使われていた。

映画

1973年の東宝怪獣映画ゴジラ対メガロ』で、冒頭のイルカの乗り物のシーンが撮影された。渦巻く湖と怪しい光と干上がる湖は特撮である。

ギャラリー

脚注

注釈

  1. 富士河口湖町の公表しているデータでは、西湖、精進湖、本栖湖の「湖面積標高」をいずれも900.0メートルとしている[6]。また竹内邦良、切石史子、今村英之「富士五湖の水位変動機構」では西湖、精進湖、本栖湖の「水面海抜高度」をいずれも899.2メートルとしている[7]
  2. 純粋なクニマスは0%、クニマスとヒメマスの雑種が64.3%。純粋なヒメマスが35.7%。

出典

  1. 1 2 国土地理院 (2015年3月6日). 平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積 (PDF). 2015年3月24日閲覧。
  2. 1 2 湖沼湿原調査[リンク切れ] 国土地理院
  3. 1 2 3 4 5 6 環境庁自然保護局/朝日航洋株式会社『第4回自然環境保全基礎調査 湖沼調査報告書(全国版)1993』湖沼概要一覧表 25頁
  4. 1 2 3 世界文化遺産と構成資産”. 富士河口湖町. 2026年1月20日閲覧。
  5. 富士箱根伊豆国立公園の区域図 (PDF). 環境省. 2012年2月1日閲覧。
  6. データで見る富士河口湖町”. 富士河口湖町. 2026年1月22日閲覧。
  7. 1 2 3 4 5 竹内 邦良、切石 史子、今村 英之「富士五湖の水位変動機構」『水工学論文集』第39巻、土木学会、1995年、31-36頁、doi:10.2208/prohe.39.31
  8. 1 2 内山 高、輿水 達司「富士五湖の形成史」『日本地質学会学術大会講演要旨』、日本地質学会、2011年、doi:10.14863/geosocabst.2011.0.325.0
  9. 4.富士山噴火の歴史を物語る個性豊かな湧水湖”. 富士砂防事務所. 2026年1月24日閲覧。
  10. 輿水達司、内山高、吉澤一家. 富士山北麓の湖底堆積物から湖形成史を探る”. 地球惑星科学関連学会2004年合同大会予稿集. 2026年1月22日閲覧。
  11. 「富士山、未知の噴火2度?秋田大など 本栖湖の湖底調査」日本経済新聞』朝刊2018年10月11日(社会面)2018年10月19日閲覧
  12. 地区ごとの人口・世帯数 富士河口湖町役場ホームページ
  13. 1 2 大八木英夫、濱田浩美「富士山周辺の湖沼における透明度の長期的変動日本地理学会発表要旨集 発表要旨資料集 2013年度日本地理学会春季学術大会 セッションID:201 , doi:10.14866/ajg.2013s.0_1
  14. 濱田浩美、勝又大樹、大八木英夫「本栖湖の水温・水質の季節変化と水収支」『千葉大学教育学部研究紀要』第60巻 pp.459-468 (2012)
  15. 本栖湖クリーンアップ2019”. 本栖湖 ”本栖湖をもっと楽しく”. 2022年6月22日閲覧。
  16. 【イベント】本栖湖クリーンアップ2022のお知らせ”. JCUE(ジェイキュー). 2022年6月22日閲覧。
  17. 本栖湖の歴史と自然”. 本栖湖 ”本栖湖をもっと楽しく”. 2022年6月22日閲覧。
  18. 富士本栖湖リゾート
  19. 1 2 3 高橋一孝「富士五湖と四尾連湖の生息魚類の変遷」『山梨県水産技術センター事業報告書』第26号、山梨県水産技術センター、1999年3月、57-80頁、ISSN 1342-2677
  20. 本栖湖の釣り(2017年4月2日)FTUJIYAMA NAVI、2018年10月19日閲覧。
  21. 青柳敏裕「サケ科魚類のプロファイル-15 クニマス」『SALMON情報』第11号、水産研究・教育機構、2017年3月、36-39頁、ISSN 1881-705X
  22. Nakayama, Kouji; Tohkairin, Akira; Yoshikawa, Akane; Nakabo, Tetsuji (2018-04-01). “Detection and morphological characteristics of “Kunimasu” (Oncorhynchus kawamurae)/”Himemasu” (O. nerka) hybrids in Lake Motosu, Yamanashi Prefecture, Japan” (英語). Ichthyological Research 65 (2): 270–275. doi:10.1007/s10228-018-0613-z. ISSN 1616-3915.
  23. 大浜, 秀規、岡崎, 巧、青柳, 敏裕、加地, 弘一「本栖湖に密放流されたコクチバス Micropterus dolomieu の根絶」『日本水産学会誌』第78巻第4号、2012年、711–718頁、doi:10.2331/suisan.78.711ISSN 0021-5392
  24. 大浜, 秀規「本栖湖に密放流されたコクチバス Micropterus dolomieu の根絶」『日本水産学会誌』第79巻第4号、2013年、617–617頁、doi:10.2331/suisan.79.617ISSN 0021-5392
  25. 1 2 本栖湖に外来魚繁殖 中禅寺湖のみ生息が…ヒメマス食い荒らされ激減」『読売新聞』2024年10月24日、夕刊、1頁。
  26. 中禅寺湖のみ生息のはずが...レイクトラウトが山梨で確認 密放流か”. 下野新聞. 2023年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月29日閲覧。

関連項目

外部リンク