木村 幹(きむら かん、1966年(昭和41年)4月7日 - )は、日本の政治学者。神戸大学大学院国際協力研究科教授。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究、韓国政治、ナショナリズム研究、日韓関係、歴史認識問題。博士(法学)(京都大学)。大阪府東大阪市生まれ。
韓国政治、韓国ナショナリズム、民主化、政治文化、イデオロギー、歴史認識問題、日韓関係に関する研究で知られる。初期には韓国ナショナリズムと権威主義体制の成立過程を研究し、その後、韓国民主化、ポピュリズム、反共主義、慰安婦問題、日韓歴史認識問題、北朝鮮認識、東アジア国際関係などへ研究対象を広げた[1][2]。 母語である日本語に加え、韓国語および英語による講演・メディア出演も行っている。韓国語メディアでは大邱MBCのインタビューに出演し、英語では済州平和研究院による「JPI PeaceTalk」に登壇している[3][4]。
学術研究に加えて、韓国情勢、日韓関係、高等教育、大学運営、プロ野球などについて一般向けの評論活動も行っている。『ニューズウィーク日本版』では韓国政治・日韓関係に関する記事を継続的に執筆し、『文春オンライン』では韓国問題、大学教員の仕事、プロ野球オリックス・バファローズに関するコラムを執筆している[5][6]。
略歴
学歴
生駒市立生駒東小学校、生駒市立緑ヶ丘中学校、東大寺学園高等学校を経て、京都大学法学部へ進学した。
- 1990年(平成2年) - 京都大学法学部卒業
- 1992年(平成4年) - 京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了
- 1993年(平成5年) - 京都大学大学院法学研究科博士後期課程退学
- 2001年(平成13年) - 博士(法学)(京都大学)[1]
職歴
- 1997年(平成9年) - 神戸大学大学院国際協力研究科助教授
- 2005年(平成17年) - 神戸大学大学院国際協力研究科教授
- 2017年(平成29年) - 神戸大学アジア総合学術センター長(2021年3月まで)
- 2023年(令和5年) - 神戸大学大学院国際協力研究科研究科長(2025年3月まで)
- 2025年(令和7年) - 神戸大学大学院国際協力研究科副研究科長(2026年3月まで)[1]
海外研究歴・兼職
- 韓国国際交流財団研究フェロー(1996年-1997年)
- ハーバード大学フェアバンク東アジア研究センター客員研究員(1998年-1999年)
- 高麗大学校亜細亜問題研究所客員研究員(2001年)
- 世宗研究所客員研究員(2006年)
- オーストラリア国立大学アジア太平洋学部客員研究員(2008年)
- ワシントン大学ジャクソン国際学部客員研究員(2010年-2011年)
- 高麗大学校国際大学院招聘教授(2014年)
- ソウル大学校日本研究所客員研究員(2025年)
- 延世大学校法学専門大学院客員研究員(2025年)
- 関西大学法学研究所研究員(2000年-2001年)
- 兵庫県国際交流協会運営委員(2005年-2008年)
- 第一次日韓歴史共同研究(2002年-2005年)委員会研究協力者
- 第二次日韓歴史共同研究(2007年-2010年)委員会委員
- NPO法人汎太平洋フォーラム理事長[2]
- 一般財団法人アジア太平洋研究所主席研究員(2014年-2015年)
- 朝日新聞論壇委員(2015年-2016年)
- 神戸新聞客員論説委員(2016年-2020年)[1]
学会活動
現代韓国朝鮮学会、東アジア近代史学会、日本政治学会、日本比較政治学会などで活動している。
- 東アジア近代史学会理事(1996年 - )
- 現代韓国朝鮮学会理事(2000年 - )
- 日本比較政治学会企画委員(2000年-2001年)
- 日本政治学会文献委員(2001年-2002年)
- 日本政治学会日韓交流小委員長(2002年-2004年)
- 日本政治学会選挙管理委員(2005年-2007年)
- 日本政治学会研究交流委員(2008年-2010年)
- 日本比較政治学会理事(2010年-2011年)
- 日本政治学会書評委員(2012年-2013年)
- 現代韓国朝鮮学会編集委員長(2014年-2016年)
- 現代韓国朝鮮学会企画委員長(2018年-2020年)
- 現代韓国朝鮮学会副会長(2020年-2022年)
- 現代韓国朝鮮学会会長(2022年-2024年)[1]
受賞
研究
木村の研究は、韓国政治を中心に、ナショナリズム、民主化、イデオロギー、政治文化、歴史認識問題、日韓関係を横断している。researchmapでは研究キーワードとして「日韓関係」「歴史認識」「国際関係」「東アジア」「民主主義」「近代化」「政治文化」「イデオロギー」「ナショナリズム」「韓国」「朝鮮」が挙げられている[1]。
神戸大学大学院国際協力研究科の教員紹介では、研究テーマを「韓国のナショナリズムと歴史認識問題の発展過程」としている。同プロフィールでは、朝鮮半島における歴史的経験を通じて、文化やイデオロギーが政治に果たす役割に関心を持ち、近年は主として1980年代以降の韓国を対象に、民主主義やナショナリズムの変化を研究していると紹介されている[2]。
初期の代表作『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』では、朝鮮王朝から近代国民国家への移行を背景に、韓国ナショナリズムと「小国」意識の関係を論じた。同書により第13回アジア・太平洋賞特別賞を受賞した[1]。
『韓国における「権威主義的」体制の成立』では、李承晩政権期を中心に韓国政治体制の形成過程を分析し、第25回サントリー学芸賞を受賞した[1]。
『民主化の韓国政治 朴正煕と野党政治家たち1961~1979』では、朴正煕政権期の野党政治家と民主化過程を扱った。小林良彰は同書を「『民主化の安定』という比較政治の視点を通して、韓国政治の実像を見事に描き出した著者の卓越した力量に敬意を表したい」と評している[7]。
2014年の『日韓歴史認識問題とは何か』では、歴史教科書問題、慰安婦問題、ポピュリズムを軸に、日韓両国における歴史認識問題の形成と拡大を分析した。同書により第16回読売・吉野作造賞を受賞した[1]。
2020年代には、韓国民主主義の変容、大規模デモと制度政治、朴正熙・全斗煥政権の自己正統化論理、北朝鮮認識の変化、日米韓協力、インド太平洋地域の安全保障などへ研究領域を広げている。researchmapおよび神戸大学研究者紹介システムには、2023年以降の研究業績として、韓国民主主義、ポピュリズム、日韓関係、北朝鮮認識、日本・インドネシア海洋安全保障協力などに関する論文・章が掲載されている[1][8]。
2012年5月には、安秉直(アン・ビョンジク)ソウル大学校名誉教授が発見した『日本軍慰安所管理人の日記』の日本語版監訳者を、堀和生京都大学教授とともに務めた[9][10]。
教育・大学運営
神戸大学大学院国際協力研究科では、政治・地域研究プログラムに所属し、日本語で行われる「政治学研究入門」「比較政治文化」「政治社会発展論演習」などを担当している。また、同研究科の英語表記プロフィールでは、担当科目として「Introduction to Political Analysis」および「Special Seminar」が示されており、日本語で行われるコースと英語で行われるコースの双方を担当している[2]。
教育上は、地域研究を、単に特定地域の事実を知るだけではなく、対象社会がどのように成立し、変化しているかを考える学問として位置づけている。神戸大学公式プロフィールのメッセージでは、研究対象となる地域や時代、研究者自身の経験によって地域研究の視点は異なり、自分がなぜその地域に関心を持つようになったのかを考えながら地域と向き合うことが重要だとしている[2]。
神戸大学では、アジア総合学術センター長、国際協力研究科長、副研究科長などの大学運営にも携わった[1]。
2025年には、国立大学教員の採用、昇進、研究費、学内行政、学会運営、大学院教育、海外展開などを扱った一般向け著作『国立大学教授のお仕事 とある部局長のホンネ』を刊行した。同書は、1993年に愛媛大学法文学部助手として採用されて以降、国立大学の独立行政法人化、研究費・人員削減、外部資金獲得、大学教員の業務増大などを経験してきた立場から、国立大学の30年を描いたものと紹介されている[11]。
木村の指導を受けた大学院生には、韓国政治、記憶政治、比較政治、地域行政、開発援助、移民、多文化共生、東南アジア政治、安全保障、メディア研究、観光研究など、多様な分野で研究を続ける者がいる[要出典]。
言論活動
学術研究に加えて、韓国政治、日韓関係、高等教育、大学運営などについて一般向けの執筆活動を行っている。
『ニューズウィーク日本版』では「韓国を知る」の筆者として、韓国政治、北朝鮮、日韓関係、東アジア情勢に関する記事を継続的に寄稿している[5]。同誌のプロフィールでは、専門を比較政治学、朝鮮半島地域研究とし、『韓国愛憎』『歴史認識はどう語られてきたか』『平成時代の日韓関係』『日韓歴史認識問題とは何か』『韓国における「権威主義的」体制の成立』『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』『高宗・閔妃』などが主要著作として紹介されている[5]。
『文春オンライン』では、韓国問題や大学教員の仕事に関する記事のほか、オリックス・バファローズに関する「文春野球コラム」を多数執筆している[6]。同サイトでは、2025年に『国立大学教授のお仕事』の一部として、大学教員の給与事情や食事事情を扱う記事も掲載された[6]。
韓国語・英語での発信も多く、韓国語メディアでは大邱MBCのインタビューに出演し、日韓関係や韓国政府の対日政策についてコメントしている[3]。また、済州平和研究院の英語企画「JPI PeaceTalk」にも登壇している[4]。
プロ野球に関する執筆では、オリックス・バファローズのチーム作り、若手育成、ファン心理を題材にすることが多い。2023年の文春野球コラムでは、オリックスの若手育成システムを大学運営の比喩として扱った記事も掲載されている[6]。
韓国での取材中の出来事
2017年3月、韓国に滞在中、朴槿恵大統領弾劾に反対する保守派デモの現場を取材・撮影していた際、デモ参加者に取り囲まれ、警察に引き渡される出来事があった。韓国メディアYTNは、木村が研究のためにデモの様子を撮影していたところ、参加者から「誰だ」と問い詰められ、日本人であると答えると、韓国語を話すことを理由に「朝鮮総連のスパイ」と疑われ、警察に連れて行かれたと報じた[12]。
YTNによれば、木村は警察で約15分間事情を聴かれ、当時パスポートを所持していなかったため、過去の高麗大学客員教授証を示した。その後、警察とデモ参加者の一人が滞在先ホテルまで同行して身元確認を行い、騒動は収束したとされる[12]。
オリックス・バファローズのファンとして知られる。『文春オンライン』の著者ページには、オリックスのリーグ優勝、若手育成、ファン心理、選手個人に関するコラムが多数掲載されている[6]。
2023年には、PRESIDENT Onlineで「熱狂的オリックスファンの政治学者」として紹介され、阪神タイガースファンと関西のプロ野球文化を論じた記事を執筆した。同記事では、1970年代以降の関西のメディア環境、阪神中心の野球報道、南海・阪急・近鉄・オリックスのファンが置かれた状況を、自身の経験を交えて論じている[13]。
ロードバイク愛好家でもあり、公開されている走行記録サービスKomoot上では、年間6000kmを超える走行記録が確認できる年もある[14]。
著書
単著
- 『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識 朝貢国から国民国家へ』ミネルヴァ書房〈Minerva人文・社会科学叢書 39〉、2000年10月30日。ISBN 4-623-03292-2。
- 기무라 간(木村 幹) (2007-12-05). 조선/한국의 내셔널리즘과 소국의식 : 조공국에서 국민국가로(朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識 : 朝貢国から国民国家へ). 김 세덕(金 世徳)訳. 산처럼(サンチョロム). ISBN 9788990062239 - 韓国語版:金世徳訳、サンチョロム。
- 『韓国における「権威主義的」体制の成立 李承晩政権の崩壊まで』ミネルヴァ書房〈Minerva人文・社会科学叢書 71〉、2003年6月10日。ISBN 4-623-03757-6。
- 기무라 간(木村 幹) (2013-12-30). 한국의 권위주의적 체제 성립 : 이승만 정권의 붕괴까지(韓国における「権威主義的」体制の成立:李承晩政権の崩壊まで). 김 세덕(金 世徳)訳. 제이앤씨(J&C). ISBN 9788956689975 - 韓国語版:金世徳訳、J&C。
- 『朝鮮半島をどう見るか』集英社〈集英社新書〉、2004年5月14日。ISBN 4-08-720241-0。
- 『高宗・閔妃 然らば致し方なし』ミネルヴァ書房〈ミネルヴァ日本評伝選〉、2007年12月10日。ISBN 978-4-623-05035-2。
- 기무라 간(木村 幹) (2017-08-25). 김 세덕(金 世徳)訳. 제이앤씨. ISBN 9791159170713 - 韓国語版:金世徳訳、J&C。
- 『民主化の韓国政治 朴正煕と野党政治家たち1961~1979』名古屋大学出版会、2008年1月。ISBN 978-4-8158-0572-2。
- 『韓国現代史 大統領たちの栄光と蹉跌』中央公論新社〈中公新書〉、2008年8月25日。ISBN 978-4-12-101959-2。
- 『近代韓国のナショナリズム』ナカニシヤ出版、2009年7月。ISBN 978-4-7795-0343-6。
- 『日韓歴史認識問題とは何か』ミネルヴァ書房、2014年10月。ISBN 978-4-6230-7175-3。
- 기무라 간(木村 幹) (2019-06-03). 한일 역사인식 문제의 메커니즘(韓日歴史認識問題のメカニズム). 김 세덕(金 世徳)訳. 제이앤씨. ISBN 9791159171413 - 韓国語版:金世徳訳、J&C。
- The Burden of the Past: Problems of Historical Perception in Japan-Korea Relations, University of Michigan Press, 2019.
- 『歴史認識はどう語られてきたか』千倉書房、2020年7月。ISBN 978-4805112076。
- 『韓国愛憎 激変する隣国と私の30年』中央公論新社〈中公新書〉、2022年1月。ISBN 978-4121026828。
共編・編著・共編著
- 玉田芳史 共編『民主化とナショナリズムの現地点』ミネルヴァ書房、2006年4月。ISBN 4-623-04568-4。
- 石田佐恵子、山中千恵 共編著『ポスト韓流のメディア社会学』ミネルヴァ書房〈叢書・現代社会のフロンティア 10〉、2007年10月。ISBN 978-4-623-04868-7。
- 島田幸典 共編著『ポピュリズム・民主主義・政治指導 制度的変動期の比較政治学』ミネルヴァ書房〈Minerva比較政治学叢書 1〉、2009年10月。ISBN 978-4-623-05542-5。
- 浅羽祐樹、佐藤大介 共著『徹底検証 韓国論の通説・俗説 日韓対立の感情vs.論理』中央公論新社〈中公新書ラクレ〉、2012年12月。ISBN 978-4-12-150439-5。
- 浅羽祐樹、安田峰俊 共著『だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」』講談社、2017年5月。ISBN 978-4-06-2206303。
- 田中悟、金容民 共編『平成時代の日韓関係 楽観から悲観への三〇年』ミネルヴァ書房、2020年7月。ISBN 978-4623088232。
出演
- ポリタスTV(YouTube、2020年6月3日)
- エアレボリューション(ニコニコ生放送、2025年2月27日)
脚注
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 “木村 幹 Kan Kimura - researchmap”. researchmap. 2026年7月6日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “木村 幹|教員紹介”. 神戸大学大学院国際協力研究科. 2026年7月6日閲覧。
- 1 2 “일본 학자 "한국 정부, 일본 정부에 이렇게까지···"”. 대구MBC뉴스. 2026年7月6日閲覧。
- 1 2 “[JPI PeaceTalk Kan Kimura, Professor, Kobe University]”. Jeju Peace Institute. 2026年7月6日閲覧。
- 1 2 3 4 “木村幹の記事一覧”. ニューズウィーク日本版. 2026年7月6日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “木村 幹 プロフィール”. 文春オンライン. 2026年7月6日閲覧。
- ↑ “民主化の韓国政治-朴正熙と野党政治家たち1961〜1979”. 朝日新聞. 2008年2月17日. 2012年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ.
- ↑ “木村 幹|神戸大学研究者紹介システム”. 神戸大学. 2026年7月6日閲覧。
- ↑ “日本軍慰安所管理人の日記”. 落星台経済研究所. 2018年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月21日閲覧。
- ↑ 毎日新聞 2013年8月7日「慰安所:朝鮮人男性従業員の日記発見 ビルマなどでつづる」
- ↑ “国立大学教授のお仕事|木村 幹”. 筑摩書房. 2026年7月6日閲覧。
- 1 2 “[단독 탄핵 반대 시위대, 일본 교수 간첩으로 신고]”. YTN (2017年3月10日). 2026年7月6日閲覧。
- ↑ “なぜ阪神ファンは道頓堀に飛び込むのか…熱狂的オリックスファンの政治学者がみる関西の特殊事情”. PRESIDENT Online (2023年9月20日). 2026年7月6日閲覧。
- ↑ “Kan Kimura's activities”. Komoot. 2026年7月6日閲覧。